
アパート建築を検討している方の中には、木造アパートで上手く賃貸経営できないか思案している方も多いと思います。
木造アパートは他の構造に比べるとコストが安いというメリットがありますが、入居者からのイメージは必ずしも高くないため、成功するためのポイントをしっかり押さえて建てることが肝心です。
では、その「成功するためのポイント」とは何でしょうか?
気になりますよね?
そこでこの記事では、これから木造のアパート建築を検討している方に向けて、「木造アパートのメリット・デメリット」や「成功するための7つのコツ」について紹介していきます。
アパートは何十年も収益を生む大事な資産ですので、成功するコツをしっかり押さえて、ぜひ良質なアパートを建築してください!
Contents
1.木造アパートのメリットとデメリット
最初に木造アパートのメリットとデメリットについて解説します。
1-1.メリット
木造アパートのメリットとしては主に以下の3点が挙げられます。
(1)コストが安い
(2)利回りが高くなる
(3)ツーバイフォーで貸室形状を整形に作れる
それぞれ順番に見ていきましょう。
1-1-1.コストが安い
木造アパートはコストが安いことが最大のメリットです。
アパートの建築費用は、躯体の構造によっておよその相場があります。
構造別の坪単価の相場は以下の通りです。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 坪77~97万円 |
鉄骨造 | 坪84~104万円 |
鉄筋コンクリート造 | 坪92~120万円 |
多くのアパートは2階建てですので、アパートの構造は木造または鉄骨造が多く採用されています。
鉄筋コンクリート造のアパートは少数派ですが、海岸沿いに建てる場合や台風の多い沖縄等で建てる場合には、鉄筋コンクリート造が採用されることが多いです。
アパートは他の構造と比べると比較的安価に建てられることが多いため、賃貸オーナーにとっては底堅い人気のある構造となっています。
1-1-2.利回りが高くなる
木造であっても、新築当初であれば他の構造のアパートと遜色のない賃料で貸し出すことが可能です。
木造アパートは他の構造よりも投資額を安く抑えることができますので、結果的に利回りが高くなります。
アパートの賃料は、主に立地や築年数、間取り、広さ等で決定されるため、構造が直接賃料に与える影響は少ないです。
賃貸市場は、鉄筋コンクリート造だから賃料が高い、木造だから賃料が低いという風にはなっていません。
木造で建てたとしても、相場の賃料で普通に貸せますので、木造アパートの投資効率は高いといえます。
1-1-3.ツーバイフォーで貸室形状を整形に作れる
ハウスメーカーで木造アパートの建築を依頼すると、ツーバイフォーと呼ばれる工法で建てられることが多いです。
ツーバイフォーで建てると、貸室形状を整形に作れるというメリットがあります。
ツーバイフォー工法とは、断面寸法が2インチ×4インチの寸法の木材を使い、壁で建物を支えていく工法となります。
一般的に、鉄筋コンクリート造のような建物は、柱と梁(柱と柱を繋ぐ横架材のこと)で建物を支えていますが、鉄筋コンクリート造で建てられた賃貸マンションでは、部屋の四隅に大きな柱は飛び出していることが良くあります。
部屋の中に柱が飛び出すと貸室形状が不整形となるため、貸しにくくなる原因になってしまいます。
一方で、ツーバイフォーの場合には、壁だけで建物を支えていくため、そもそも柱が存在しません。
ツーバイフォーなら、貸室内に柱が飛び出ることがなく整形な部屋を作ることが可能です。
よって、木造でツーバイフォーを選択すれば、自然と「貸しやすい部屋」ができるという点がメリットとなります。
1-2.デメリット
木造アパートのデメリットとしては主に以下の3点が挙げられます。
(1)入居者からのイメージが必ずしも高くない
(2)腐朽しやすい
(3)高層建物に適さない
1-2-1.入居者からのイメージは必ずしも高くない
木造の最大のデメリットは、入居者からのイメージが必ずしも高くないという点です。
アパートの入居者は、隣戸からの騒音や耐震性を気にします。
入居者の中には、「木造だからうるさい」、「木造だから地震に弱い」というイメージを持っている人も多く、木造アパートには住みたくないと思う人もいます。
実際に鉄骨造でも隣戸との壁が薄ければ音は聞こえますので、木造だからうるさいというものではありませんし、耐震性も木造であろうが鉄骨造であろうが同じ建築基準法の基準を満たすことになりますので、木造だから耐震性が低いというものでもありません。
しかしながら、木造というとなぜか老朽化したアパートを想像する人も多く、必ずしもイメージは高くないのが実態です。
そのため、木造アパートを建てるには、構造以外の部分で入居者の支持を得ることが必要となってきます。
例えば、収納スペースを多く確保することや、セキュリティを強化する等、他のアパートよりも優れた企画を盛り込んでおくことがポイントとなってきます。
木造アパートのネガティブなイメージを払拭するためにも、建築時点では次章で解説する「木造アパート建築で成功するための7つのコツ」をしっかり意識することが重要です。
1-2-2.腐朽しやすい
木造アパートは、シロアリ等の虫害被害もあるため、他の構造に比べて腐朽しやすいという点がデメリットです。
また、鉄筋コンクリートのように堅牢ではないことから、風雨にも弱いという特徴があります。
建設資材としては、柔らかい資材の部類に属することから、他の構造と比べると見た目上の劣化も早いという点も特徴です。
木造アパートは見た目上の劣化が早く進むため、築年数が古くなったとき、他の構造よりも入居者が埋まりにくくなる点もデメリットとなります。
1-2-3.高層建物に適さない
木造建物は、高層建物に適さない点がデメリットです。
3階建ての木造アパートもできないことはありませんが、基本は2階までが限度となります。
木造で3階建てとする場合、耐火構造にしなければならないため、建築コストが一気に高くなってしまいます。
コストメリットが薄れてしまうため、3階建てアパートを選択する場合には、鉄骨造が選択されることが多いです。
また、4階以上にする場合、構造としては重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造が適切な構造となります。

誤解の多い木造アパートの耐震性
木造アパートは、木造だからといって耐震性が低いわけではありません。
木造か否かに関わらず、これから建てる建物は現行の耐震基準を満たさなければならないため、木造だからといって地震ですぐに倒壊するわけではないです。
現行の耐震基準は、新耐震基準と呼ばれます。
新耐震基準とは、昭和56年(1981年)6月1日以降に建築確認申請を通した建物のことです。
新耐震基準の建物は、阪神淡路大震災にてその耐震性が証明されたことから、新耐震基準の信頼性は高く評価されています。
これから建てる建物は、木造であっても当然に新耐震基準を満たしますので、耐震性はしっかり備わっていることになります。
ただし、木造は鉄筋コンクリート造のような堅牢な躯体ではないため、地震時の建物の揺れは大きくなるという点が特徴です。
そのため、木造アパートでは、外壁材にタイルや石といった重い外壁材は付けにくいという特徴があります。
タイルや石等の硬い外壁材を貼れる鉄筋コンクリート造の建物は、建物の外観を長期に良好に保つことができ、また高級感を出すこともできます。
木造アパートは、耐震性は低くないものの地震時の揺れは大きいため、選べる外壁材が限定されてしまう点に留意してください。
2.木造アパート建築で成功するための7つのコツ
この章では木造アパート建築で失敗しないための7つのコツについて解説します。
2-1.複数のハウスメーカーを幅広く比較する
木造が得意なハウスメーカーは多く存在しますので、まずは複数のハウスメーカーを幅広く比較するために、さまざまなハウスメーカーから提案を受けることをおススメします。
複数のハウスメーカーを比較することで、木造の中でもさらに適切な建築費で建ててくれるハウスメーカーを見つけることができます。
尚、比較検討できるのは最初のタイミングだけなので、できれば他の構造についても一度提案を受けてみると良いでしょう。
理由としては、鉄骨造のアパートでも木造よりも安いケースがあるからです。
アパートの建築費相場は、木造なら「坪77~97万円」、鉄骨造なら「坪84~104万円」でした。
価格帯としては重複している部分もあり、必ずしも常に木造が一番安いとは限らないことになります。
アパートの建築費の内訳を大雑把に示すと以下のようになります。
アパートの建築費は全体のうち、躯体が40%、仕上が40%、設備が20%を占めます。
躯体とは、基礎、柱、壁、屋根等の建物の主要構造部分のことです。
仕上とは、内装や外装、床、天井等の実際に目に見える表面的な部分の建築資材を指します。
設備とは、水道、電気、空調等の工事です。
このうち、木造や鉄骨造が関わる部分は、「躯体」の部分になります。
仕上や設備の工事費は全体の6割近くも占めるため、たとえ木造を選んだとしても仕上や設備の仕様が高ければ鉄骨造よりも高くなってしまうことがあります。
また、似たような仕上や設備を選んだとしても、ハウスメーカーによって資材を仕入る購買力が異なるため、ハウスメーカーを変えるとコストが安くなることがあります。
そのため、アパートの建築費は単純に構造だけで決まるものではなく、仕上や設備の仕様、各社の購買力等も関わることから、木造以外の他の構造も含めて広く建築費の見積もりを取った方が良いのです。
ただし、大手ハウスメーカーを比較するといっても、自分でハウスメーカーを選んで見積もりを取るのは大変な手間です。
そこで、アパート建築費の相見積もりを取るなら、「HOME4U(ホームフォーユー)土地活用」がおススメです。
「HOME4U 土地活用」は、お持ちの土地の所在地や広さなどの簡単な項目を入力するだけで、誰でも簡単に木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の幅広い構造に対応できるハウスメーカーから、自然と見積もりが取れるようになっています。
しかも、プラン提案してくれるハウスメーカーは、各構造で日本トップクラスのハウスメーカーばかりですので、コストや施工の質、工期について申し分のない建築プランを知ることができます。
建築プランには、設計図面の他、建築費や、その他の費用、将来の収益計画まで盛り込まれています。
アパート建築で知りたいことが全部わかるようになっていますので、利用しない手はありません。
良質なアパートを建てるなら、「HOME4U 土地活用」を使って、まずは他の構造も含めて幅広くハウスメーカーを比較することから始めてください。
2-2.設備のスペックは落とさない
木造アパート建築では、設備のスペックを落とさないことが失敗しないためのコツです。
住宅の設備とは、温水洗浄便座やエアコン、浴室乾燥機、インターフォン、インターネット環境等の設備のことです。
木造は入居者のイメージが高くないため、設備スペックまで低いとさらに入居者が決まりにくくなります。
例えば浴室の追い焚き機能のように過剰な設備を付ける必要はありませんが、「エアコンを付けない」、「温水洗浄便座を設置しない」等の基本的な設備を付けないことは避けるべきです。
他の新築物件と比較して最低限付いている設備は設置し、入居希望者に「ここなら借りたい」と思ってもらう程度の設備を付けることがポイントです。
尚、アパート建築ではプロパンガスにすることで、プロパンガス会社がエアコン等の設備を無償で設置してくれるサービスがあります。
しかしながら、プロパンガスにしてしまうと入居者が負担するガス料金が上がってしまうため、さらに入居が決まりにくくなる原因となってしまいます。
したがって、特に木造アパートの場合は、プロパンガスの選択は避けるべきです。
都市ガスが整備されているエリアであれば都市ガスを選択し、設備はオーナーの費用負担で設置することをおススメします。
2-3.収納とセキュリティと強化する
木造に限らずアパートは収納力やセキュリティ性が低いため、企画の段階で収納とセキュリティと強化することが競争力を高めるコツです。
収納を増やしたり、セキュリティを強化したりすることは、空室対策でも行われていますので、新築当初から収納やセキュリティを強化しておくと入居率のアップに繋がります。
収納に関しては、物置型のトランクルームもありますので、新築当初から敷地にトランクルームを設置しておくことも効果的でしょう。
また、アパートはマンションのように集合玄関がないため、オートロックが設置できずセキュリティ面が弱いです。
そのため、「カラーモニター付きインターフォンの設置」や、「駐車場への防犯カメラの設置」、「玄関扉のダブルロック化」等を行ってセキュリティを強化しておく必要があります。
収納やセキュリティは、アパートの競争力そのものを向上させますので、木造に限らず他の構造でも強化しておくことが重要です。
2-4.入居者サービスが充実した管理会社を選ぶ
入居者サービスが充実した管理会社を選ぶことも木造アパートで成功するコツです。
アパートは入居者へのサービスでも競争力をアップすることができますので、入居者にメリットのあるサービスを提供している管理会社は選ぶ価値があります。
アパート建築では、ハウスメーカーから管理の提案もセットでありますので、入居者に対してどのようなサービスが行われるかも確認して上でハウスメーカーを決めることもポイントです。
例えば、管理会社の中には入居者に対して家賃と水道光熱費をセットで請求するサービスを展開している会社もあります。
家賃と水道光熱費を合わせて請求してもらえれば、入居者の支払い手続きが楽になります。
また、家賃の支払いをクレジットカード払い可としている会社もあります。
クレジットカード払いにすると、毎月の家賃でカードのポイントを貯めることができるため、入居者のニーズは高いです。
さらに、アプリで街の情報を提供している管理メニューを用意するなど、若い世代の入居者を飽きさせない工夫をしている会社もあります。
入居者サービスが気に入ってもらえれば、木造であることを意識させずに入居者を獲得することができます。
また、管理は管理会社が行う人的サービスであるため、築年数が古くなっても劣化せずに良いサービスを提供し続けることも可能です。
腐朽が早い木造アパートでは、管理に力点を置くことで、収益力の低下の速度を遅くすることができます。
ハウスメーカーを決定する際は、管理会社が入居者に対してどのようなサービスを提供するのかも比較した上で選ぶようにしてください。
2-5.修繕計画を良く確認する
アパート建築では、修繕計画も良く確認した上で決めることが失敗を防ぐコツです。
大手ハウスメーカーであれば、関連会社に保守メンテナンス会社を有していますので、その保守メンテナンス会社がどのようなサポートをしてくれるのかをしっかりと確認することがポイントとなります。
また、ハウスメーカーの提案の中には、大規模修繕費を毎月積み立てていくような計画もあります。
大規模修繕費はなかなか自分で貯金していくことはできないので、毎月自動で修繕費を積み立てる仕組みであれば、将来の大規模修繕も安心です。
修繕費を積立てるケースでは、他に費用が発生しないのかも重要な確認ポイントとなります。
2-6.10室以上のアパートを建てる
これからアパートを建てるのであれば、10室以上を設けると収益面でメリットが出てきます。
10室以上の部屋があるアパートは、事業的規模のアパートと呼ばれます。
事業的規模になると、確定申告時に最大65万円の青色申告特別控除を行うことができます。
事業的規模でない場合、青色申告特別控除の額は10万円ですので節税効果が弱まります。
そのため、広めの間取りで8室とするよりは小さな間取りで10室とした方が節税効果は高くなります。
また、事業的規模の場合、「青色事業専従者給与」も費用として計上することができます。
青色事業専従者給与とは、生計を一にする15歳以上の配偶者その他の親族への給与のことです。
「青色申告特別控除」に「青色事業専従者給与」も加えれば、さらに節税効果が高くなります。
ただし、事業的規模のアパートには、「事業税」という税金がかかります。
とはいえ、事業税の計算にあたっては、290万円の事業主控除という制度があるため、事業税はそれほど大きな負担にはなりません。
10~12室程度であれば、事業的規模にしてしまった方が有利であるため、これからアパートを建てるのであれば10室以上を意識して建てることをおススメします。
2-7.融資は耐用年数以内で組む
アパート建築の融資を受ける際、融資は耐用年数以内で組むのがおススメです。
耐用年数とは、会計上の減価償却費が計上できる期間のことを指します。
減価償却費とは、建物の取得原価を各会計期間に費用として配分する際に生じる会計上の費用のことです。
耐用年数は建物の構造によって決まっていますが、木造の場合は「22年」となっています。
言い換えると、木造アパートは22年間しか減価償却費を計上できないことになります。
減価償却費は、支出を伴わない費用ですが、会計上の費用であるため、最終的な利益を小さくします。
税金は利益に対してかかるため、利益を小さくしてくれる減価償却費には節税効果があるということです。
ところが、22年を過ぎると減価償却費が計上できなくなるため、23年目以降は突如として税金が増えることになります。
この際、23年目以降に借入金も残っていると、増額された税金が加わるため、一気にキャッシュフローが悪化します。
23年目以降の急激なキャッシュフローの悪化を防ぐには、借入金は22年以内に返済しておくことが必要です。
一般的に、多くの銀行ではアパートローンはそもそも耐用年数以内までしか組めないことになっています。
ただし、一部の銀行では耐用年数を超えてローンを組める銀行も存在します。
長期でローンを組むと、毎月の返済額を小さくできるため、耐用年数以上にローンを組める銀行を必死で探す方もいます。
しかしながら、耐用年数以上にローンを組むと、23年目以降にアパート経営が一気に苦しくなってしまいますので、木造アパートを建てるには、あくまでもローンは22年以内で組むことが失敗を防ぐコツです。
まとめ
いかがでしたか。
「木造アパートの建築」について解説してきました。
木造アパートはコストが比較的安いという点が最大のメリットではありますが、入居者からのイメージが必ずしも高くないというデメリットもありますので、デメリットを補完するようなサービスや設備をつけるようにしてください。
木造アパートを建てるにあたっては、「HOME4U 土地活用」を使って複数のハウスメーカーをしっかりと比較することが成功への第一歩です。
低コストで建てられる木造アパートのメリットを活かすためにも、ぜひ7つのコツを意識して、木造アパート経営を成功に導いてください。
本記事の掲載内容は、最終更新日時点での情報です。
制度や法律については、改正等で内容に変更がある場合もございます。