事業用定期借地権の契約前に土地オーナーが知るべき大切な事

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事業用定期借地権の契約前に土地オーナーが知るべき大切な事

借地による土地活用なら、事業用定期借地権がおススメです。事業用定期借地権の打診があった場合、断る理由はほとんどありません。

ただし、事業用定期借地権は借地借家法によってルールががっちり決まっているため、話を詰める前に最低限の基礎知識を身に着けておくことが重要です。

そこでこの記事では、事業用定期借地を行う前に、土地オーナーとして知っておくべき基礎知識について解説致します。法律の知識はもちろん、地代や保証金はいくらにすべきかといった考え方についてもご紹介いたします。

最後までお読みいただき、事業用定期借地の活用に役立てていただけると幸いです。

1. 事業用定期借地権とは

事業用定期借地権は借地借家法によって契約のルールが定められています。この章では、事業用定期借地権の基本的な規定について紹介します。

1-1. 用途が事業用建物に限定されている

事業用定期借地権は「事業用」という名称が付いているくらいなので、建物の用途が店舗や工場、倉庫、ホテル等の事業用建物に限定されています。

アパートや賃貸マンションなどは居住用ですので、事業用定期借地権で貸すことはできません。

また、老人ホームに関しては、特定人が継続的に居住する施設であり、居住用と解釈されているため、事業用定期借地権では貸せない建物となっています。

1-2. 更新がない

事業用定期借地権は定期借地権の一種なので、更新がない契約となります。契約期間満了時に、借地人(土地を借りている人)から確定的に土地が戻ってきます。

借地人が更新を希望したとしても、自動更新はできず、契約は必ず終了します。仮に借地人が事業継続を望む場合は、土地オーナーと協議の上、新たな契約を再契約することになります。

また、契約終了時においては、賃貸人に立ち退き料が発生することもありません。土地オーナーからすると、安心して土地を貸せる契約になります。

1-3. 更地返還となる

事業用定期借地権では、契約満了時は更地返還となります。建物は借地人の費用によって建てられ、取り壊しも借地人の費用によって行われます

仮に借地人が契約期間中に建物を再築したとしても、それを理由に期間延長することはできません。

事業用定期借地権が終了すれば、土地オーナーはすぐに別の土地活用をすることができます。

1-4. 契約期間に上限がある

事業用定期借地権には契約期間に上限がある事業用定期借地権は、存続期間が「10年以上30年未満」とする場合と、「30年以上50年未満」とする場合の2通りがあり、契約可能な期間の上限が定められています。存続期間を50年以上と定めた場合には、一般定期借地権として扱われます。

「10年以上30年未満」と「30年以上50年未満」の違いは、特約の扱いが異なるという点です。

10年以上30年未満」とした場合、「更新」と、「建物再築に伴う存続期間の延長」、「建物買取請求」の3つは問答無用で不可の契約になります。

それに対して、「30年以上50年未満」とした場合、「更新」と、「建物再築に伴う存続期間の延長」、「建物買取請求」の3つに関しては「できないこととする」という特約が有効になるという契約になります。

1-5. 公正証書で契約しなければならない

事業用定期借地権は、必ず公正証書で契約しなければなりません。

類似の契約として、一般定期借地や定期借家における契約は、公正証書等で定めるとされており、「等」と書かれているので普通の契約書でも締結可能です。

しかしながら、事業用定期借地だけは「公正証書」と定められており、公正証書で定めないと契約は無効となります。少し手間になりますが、必ず公正証書で契約するようにしてください。

公正証書は、岐阜市の美濃加茂公証役場が、ホームページで書式をサンプルで開示していますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
参考:美濃加茂公証役場 | サンプル書式

2. 事業用定期借地権の地代

事業用定期借地権の地代地代に関しては、借地借家法で特段定めはありません。基本的に地代は貸主と借主との合意によって決まります。

定期借地権の地代は、相当地代という考え方を用いることが多いです。相当地代とは、地代の定価のことを指します。

相当地代は、年額の地代が更地価格の6%程度とされています。更地価格とは、更地の時価のことですが、実務上は相続税路線価で求めた価格を更地価格とすることが多いです。

土地価格によっては、相当地代は「結構高い地代」になることもあります。土地オーナーから相当地代を要求しても、特に要求し過ぎということはありません。

借地人が事業採算性から相当地代を払うのは厳しいということであれば、借地人からの値交渉はあり得ます。

ただ、あまり地代を安くしてしまうと、長期間安い地代で固定されてしまうため、土地オーナーとしては得策ではありません。

事業用定期借地権が設定できるような土地は良い土地が多いので、地代に関しては強気の交渉を行い、できれば相当地代は勝ち取るようにしましょう。

3. 事業用定期借地権のメリット

この章では事業用定期借地権における

  • 建物投資が不要である
  • 比較的短期で土地が戻ってくる
  • 撤退リスクが低い

のメリットについて解説します。

3-1. 建物投資が不要である

事業用定期借地権は、土地を貸すだけですので建物投資が不要です。建物は借地人が建てることになり、建物所有権は借地人のものとなります。

建物投資が不要であるため、土地オーナーは建物資金を調達する必要がありません。建物建築のための借入も不要ですし、借入金の返済の心配も無用です。借入金の返済に行き詰まるというようなリスクは、そもそも存在しないです。

また、土地オーナーは建物所有者ではないため、建物の修繕義務もありません。雨漏りの対応や大規模修繕の実施などは、全て借地人が行います

そのため、定期借地事業では、建物の固定資産税や保険料、維持修繕費等の建物に関する費用が一切発生しないというメリットがあります。定期借地事業の費用は基本的に土地の租税公課(固定資産税および都市計画税)のみです。

賃貸事業の悩みの原因は、建物に起因することが多いため、建物所有者とならない定期借地事業では、トラブルがかなり少なくなります。

建物投資を伴わない定期借地事業は、資金調達や建物関連費用、修繕トラブル等が発生しないため、十分にメリットのある事業です。

3-2. 比較的短期で土地が戻ってくる

事業用定期借地事業では、存続期間が10年以上30年未満または30年以上50年未満とすることが法律で定められています。この期間は借地事業としては、かなり短い方です。

同じ定期借地権でも一般定期借地権では最低契約期間が50年、建物譲渡特約付借地権では30年と定められています。また、普通借地に至っては、半永久的に土地は戻ってきません。

そのため、10年以上30年未満であれば、短い部類の借地に該当します。将来、土地を自分で利用したい人にとっては、なんとなく返還時期が見えているため、貸す側も安心感があります。

尚、定期借地事業は、契約満了時に借地人側から再契約を要望されることが比較的多いです。

理由としては、借地人の建物投資の回収に時間がかかることと、定期借地事業は比較的良い立地で設定されるため、借地人がその場所での事業継続を望むことが多いというのが理由です。

定期借地事業には更新はありませんので、土地オーナーが引き続き貸しても良いと思う場合には、再契約をすることになります。

3-3. 撤退リスクが低い

定期借地では、事業者がわざわざ建物投資を行ってまで事業展開するため、撤退リスクが低いです。

建物投資の回収には時間がかかるため、簡単に撤退するということは考えにくいです。仮に2~3年で撤退してしまえば、借地人の建物投資費用が大損となるため、なんとか踏ん張って事業を軌道に乗せようと頑張るのが借地人の心理です。

そのため、定期借地事業における徹底リスクは、建物を貸す借家事業と同列に考える必要はありません。同じコンビニであっても、借家で出店するコンビニと定期借地事業で出店するコンビニでは、借りる側の本気度が異なります

事業用定期借地権は、リスクの低い事業と考えて良いでしょう。

4. 事業用定期借地権のデメリット

事業用定期借地権は、大きなデメリットはありませんが、一定のリスクがあるのも事実です。そこでこの章では事業用定期借地権のデメリットについてご紹介します。

4-1. 借地人の破たんリスクに対応しにくい

事業用定期借地権「借地人の破たんリスク」事業用定期借地権は借地人の破たんリスクに対応しにくいというデメリットがあります。

事業用定期借地権は、契約満了時に借地人が建物を取り壊して更地返還することが原則です。借地期間の満了時まで、法人が存続していれば、特に問題はありません。

しかしながら、仮に解約期間中に借地人が倒産するようなことがあった場合、建物が取り壊されずに残ってしまうというリスクがあります。

倒産の場合は、借地人に連絡が取れなくなるということもあり得ます。また、建物は土地オーナーの所有物ではないため、勝手に壊せないという問題も生じます。

この場合、土地オーナーから裁判所に対して建物撤去の代替執行を申立てすることになります。借地人が倒産している場合、費用の回収は事実上困難なため、取り壊し費用は土地オーナーが負担することになります。

建物を貸す借家事業であれば、借主が破綻しても大きな損害はありませんが、土地を貸す定期借地事業では、借地人の破綻で土地オーナーに大きな損害が発生することがあります。借地人の破たんリスクに対応しにくいというのが定期借地事業のデメリットです。

尚、実際には借地人が破綻する場合、地代の滞納などの予兆があるはずです。そのため、予兆が発生したら、借地人が破綻する前に、更地返還に向けた対応方法を両者で話し合って解決しておくことが現実的です。

いきなり、バッと夜逃げされるようなケースは少ないので、破綻の懸念が生じたら、早めに対処を行うようにしてください。

4-2. 保証金の返還義務が相続人に移ることが多い

事業用定期借地権は保証金の返還義務が相続人に移る可能性が高いことを理解しておく必要があります。

保証金とは、契約締結時に借地人から預かる一時金であり、契約満了時に借地人への返還を要します

保証金の額については、前節の借地人が破綻リスクとも関連します。事業用定期借地権では、借地人の破綻リスクを敬遠し、建物の取り壊し費用相当分を保証金として受け取ろうとする人がいます。

取り壊し費用相当分を保証金として預かっておくことは、リスクヘッジの方法としては十分あり得る考え方です。いざ、借主が破綻しても、保証金によって取り壊し費用を賄うことができます。

しかしながら、事業用定期借地権の場合、借地期間が30年程度になるため、個人が貸主となるとその間に相続が発生することがあります。

相続が発生すると、貸主の地位は相続人に移転しますが、その際、保証金の返還義務も相続人に移転します。

保証金の返還義務も相続

親が取り壊し費用に相当する多額の保証金を預かってしまうと、子供に多額の保証金の返還義務が課されてしまいます

子供は実際に保証金を預かっているわけではないため、返還できるキャッシュがありません。近年は、定期借地権で相続人が保証金を返せないような事例も発生しています。

多額の保証金を預かることは取り壊し費用対策としてのリスクヘッジにはなりますが、一方で相続人が返還できなくなるという新たなリスクも生じさせる原因にもなるのです。

定期借地権は、期間が長いため、保証金を預かる際、相続人が返還できる金額かどうかも含めて考えるようにしましょう。

土地活用 相続税対策

5. 成功のポイントは借主の与信をしっかり確認すること

定期借地権は、借主の与信をしっかり確認することが成功のポイントとなります。

定期借地権の悩ましい点は、預かる保証金の額にあります。預かる保証金が高いほど、経営破綻時のリスクヘッジは可能ですが、相続人の返還不能リスクも高まります。

一方で、高い保証金を要求すれば、借地人に敬遠されるため、せっかくの事業用定期借地権の話が破断になる可能性もあります。

そのため、事業用定期借地権は、相続人の返還不能リスクと借地人の負担を軽減する方向から、保証金は低めの額で調整した方がスムーズとなります。

保証金の額は、一般的には地代の6ヶ月程度で調整しておくのが一つの目安です。6ヶ月分では取り壊し費用には追いつかないものの、ある程度の金額感があり、かつ、相続人も返還可能で、借地人も無理なく支払うことができる妥協点と言えます。

ただし、保証金の額を低めに設定するということは、借地人の破綻リスクが高まりますので、借地人の与信を十分に確認することがポイントとなります。

借地人の与信が高ければ、契約期間中に経営破綻をするリスクが低くなります。与信の高い借地人であれば、保証金が少なくても安心して貸すことができるようになるのです。

与信に関しては、付き合いのある銀行に、参考意見をもらうなどで調べることができます。与信の高い事業者に貸して、事業用定期借地権を成功させましょう。

まとめ

いかがでしたか。
事業用定期借地権について解説してきました。

事業用定期借地権とは、用途が事業用に限定され、更新がなく、契約終了時は更地返還となる借地です。

事業用定期借地権は、

  • 建物投資が不要である
  • 比較的短期で土地が戻ってくる
  • 撤退リスクが低い

といったメリットがあります。地代も比較的高いため、土地活用としてオススメです。

ただし、保証金は借主の破たんリスクや相続の可能性も含めて金額を設定する必要があります。リスクを抑えるためにも、与信の高い借主と契約するようにしましょう。

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